2015年5月14日木曜日

劇薬人生相談

「サラリーマン劇薬人生相談」(2008年10月 ベスト新書)は、現在75歳にして最過激派化しているひろさんの面目躍如の題材の一冊で、これまでもQ&A方式で執筆するものはどれも成功しているため、これも見事に痛快しかも簡潔な回答がこの上なくうまくいっている。ここにある8割方が共感できる内容でありながら、日本の実態とかけはなれたこのサジェスチョンが果してどこまで受け入れられているのか、と思ってしまう。

「はじめに」では、人生どう生きるか迷ってしまう、その訳は二つあり、①どこかに正解があると思っているから ②他人に褒められたいと思っているから と 分析。見事である。

その痛快な回答を抜粋。

Q. 自分は残業が多い。ひとが手抜き仕事をしているのが許せない。
A. 自分が仕事の能率が悪いことを棚にあげて、人は適当にやっているという。あの人のやり方は雑だなどというのですが、おそらく自分の仕事が遅いだけなのですよ。(略)自分も手を抜けばいい。手を抜くのは勇気がいりますよ。

Q. 上司より早く帰れず付き合い残業をしている。
A. 仲間はずれになる覚悟をすること。人の目が気になる、もしくは上司に好かれたいと思うのなら、付き合い残業をすればいい。
どっちも丸くおさまるように、と考えるのは虫が良すぎますよ。

Q. 世の中可愛い子ばかりが得をしている。可愛がられるのはルックスのいい女の子です。
A. ようするにこの人は、人が評価するのは顔だけだと思っているわけです。(略)この人は残念ながらしゃべり方も悪いし、態度も悪い、服装のセンスも悪くて、さらにかわいげもないのでしょう。人を妬むよりも、まず自分を磨く努力をしたほうがよろしいのではないでしょうか。

Q. 歳より若く見られたい気持ちが強くあります。年を取るのが怖くならずに済む方法は。
A. 歳をとるのが怖いという発想自体、年寄りを軽蔑しているのではないでしょうか。歳をとることが怖いと思う、その心が汚い。

Q. 異動になり全く違う畑でどうしていいかわからない。会社をやめるべきだろうか。
A.  「~すべきでしょうか」というのは、質問の中に必ず出てきますが、そもそもこの発想自体がおかしいのです。あれかこれか、○か×かではなく、問題を解決する方法は何通りもあります。選択肢をできるだけ多くして、どれが最適かあれこれ考えてみる。(略)この相談者のように、自分はどうしたらいいのかを決める場合にも、さまざまな選択肢がある。それなのに、いきなり「やめるべきでしょうか」と考えるのはちょっと短絡的すぎます。(略)ようするに「こういうやり方しかない」と考えるのがおかしいのです。「すべき」というワンパターンな発想自体を変えてみてください。

Q. 娘に好かれず、叱ってもいつも反抗して父親ばかりになつく。子育てに自信がない。
A. それはお父さんになついている以上に自分になついてほしいという嫉妬ですよ。子どもは、お父さんとお母さんとで天秤にかけたりしていません。そもそも、自分自身を振り返ったとき、親の言うことをそれほどちゃんと聞いていたといえるかどうか。

Q. 子どもは無事独り立ちして気づけば主人と2人。これから先、何か楽しいことが待っているとは思えません。二十代は最盛期で、男性にももてました。その頃のことを思うと、自分の老いが絶望的に悲しくなります。
A. 古代ギリシャでは人生の一番盛りの時代が四十歳とされています。ついでに言うと、キリスト教では、だいたい三十歳ぐらいが人生の標準期で、ここでようやく一人前になるとされています。ということは二十代が最高だと考えるのはやはりおかしいのです。本当の人生の味わいというものは、やっぱり七十歳を越えないとわからないのではないか、と七十二歳のわたしは思っています。そうすると、あなたはいま四十七歳だから、まだ全然子どもですよ。


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