2015年9月1日火曜日

南都六宗

【南都六宗】

いわゆる日本仏教といえば平安・鎌倉仏教ですが、その前の奈良時代における学問的要素の強かった仏教は、南都六宗として、当時大きな影響を持ちました。

うち、現存するのは3宗ですが、消滅した中にも三論宗のように、当時はトップクラスの勢力を持ったものもありました。今も残る3つの奈良仏教宗派は、本山は有名観光地と化していますが、檀家制度と一線を画しつつ、法灯を継続しています。

〔法相宗〕
薬師寺、興福寺(以前は法隆寺、清水寺も)
玄奘三蔵に直接学んだ道昭が最初期の僧。唯識。教理体系が煩雑を極める。
8〜9世紀が最盛期。

〔倶舎宗〕消滅
法相宗の付宗。「倶舎論」とその注釈書を中心に研究された。道昭が招来したと伝えられる。

〔三論宗〕消滅
智光が日本での祖。法相宗と活発な論争が行われた。
竜樹の三論教学(「中論」「十二論」「百論」の論を所依とする)に基づく。空を説くので「空宗」とも。
唐時代には廃れて、学問だけが残った状態に。
中興の祖に聖宝がいる。
華厳宗、真言宗に影響を与えた。

〔成実宗〕消滅
三論宗の付宗。「成実論」を所依として、経文を所依としなかった。小乗扱いを受け、隋時代に衰退。

〔律宗〕
唐招提寺。
戒律の宗。鑑真が伝える。戒律方法の分散化と形骸化で衰退。
鎌倉時代に叡尊が真言律宗を開いて二分する。
江戸時代に再興。
明治初期に一度真言宗が所轄したことも。

〔華厳宗〕
東大寺。
「華厳経」を所依とする。
法蔵門下の新羅の僧審祥(しんじょう)によって日本にもたらされる。良弁(ろうべん)が確立。
教理の独自性が強い。
天台教学と並んで、中国仏教の双璧と言われた。
その思想に基づいて、東大寺大仏(毘盧遮那仏)が建てられた。
鎌倉時代に明恵が密教思想を、凝然が教理を確立した。
密教思想の背景には華厳思想があり、禅思想の中にも生きている。
明治初期、一度浄土宗所轄とされた。