2015年5月14日木曜日

日めくり法話9  正しい感情を保つための心がけ

「いちばんかんたんでやりやすい感情を優先して行動を起こす、それが心の性質です。仏教では、そのすぐにやりやすい感情、なんの苦労もなくかんたんにできてしまう感情を、悪、専門用語でいえば「不善」といって戒めているのです。人間の感情には大きく分ければ二つあって、ひとつが何かの現象にすぐ反応する感情です。もうひとつは或る現象が起こってから時間が経過してから出てくる感情、つまり少し落ち着いてからでてくる感情があります。この、時間が経過してから出てくる感情は、だいたいいい感情で「善」というのですが、しかし、この「善」なる感情は大変つくりにくい。(略)
心の育成の最初の訓練は、基本的に本来産まれてくる感情を使わないことです。そのためには、ちょっとした知恵を使わなくてはならない。仏教の勉強とはまさにその「ちょっとした知恵」を学ぶことなのです。ちょっとした知恵を用いると、正しい感情の使い方が分かってくる。正しい感情というものがどういうものなのかが理解できるようになってくる。正しい感情、それはどういうことかといえば、欲張らないことであり、怒らないでやさしい心をつくることであり、人のことを良く理解することであり、人のことを嫉妬したり、うらやましく思ったりしないことです。人間はみんなそれぞれ努力して、それなりの結果を得ているのだから、それでいいではないかという、ごく波静かな感情を持つことです。(略)
こころを育てるというのは、つまり「ちょっとした知恵を使って不善の言動をしないで、善の感情が生まれるようにする」ということなのです。」



恐れることは何もない 嘘のない自分で生きていくために/アルボッムレ・スマナサーラ/泉書房

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